『春を待つ雪』
あらすじ:中野瑠璃(29)は、幼くして母の失踪を体験し、辛い幼少期を過ごしてきた。恋人・坂崎祐介(40)の転勤と妊娠を機に結婚。福井での生活をスタートする。福井は、実は瑠璃の出生地。今まで裕介にも隠し続けてきた瑠璃の過去が、否応なしに突き付けられる。そんな中、天真爛漫な17歳の妊婦・愛と出会う。愛から繋がる福井の人々との出会い、そして「家族が生まれる瞬間」を写した「出産写真」がきっかけとなって、瑠璃は初めて家族の絆を感じてゆく。
とても面白かった。
瑠璃は、幼少期に母が男を作って家を出て以来周囲からの視線に耐え、東京への引越しで福井を出る。その際祖母から人から聞かれたら母は亡くしたと言うんだよと教えられ人に言えない想いを胸に秘めていた。妊娠と夫の転勤を機に福井に戻るが東京に戻りたいという思いと母に捨てられた自分が親になれるのだろうかという葛藤が渦巻き、知り合った若い妊婦の屈託ない笑顔と図々しさに苛立ちまた自分を嫌悪する。
あまりこういうどろどろした話は得意ではないのだけど、なんとか最後まで聞くことができたし、聞くことができてよかったと思えた。