『満月の夜』

2010年1月9日(土曜日)22:00-22:50
原作:イサク・ディーネセン
あらすじ:デンマークで大地主だった父は、30年程前、些細なことがもとで小作の牛飼いを虐待死させた・・・。そんな亡き父の忌まわしい出来事の呪縛に苦しむ若き領主のもとを、満月の夜、中年女性が訪れ驚くべき話をし始める。
地主階級に生まれたという“原罪意識”と 小作側の“静かなる報復”を緊迫感溢れる心理劇として描くドラマ。

王が下した罰は、執事が下した罰でもあるのだ。
ある時、信頼のおける男爵が王を殴った。男爵は罰として牢に入れられたが、王は常ならば決してしない男爵の行いを不思議がり、なぜ殴ったのかと問うた。
男爵は語る。昔、男爵は一刻の苛立から自分の執事を殴った。執事は自分より立場の上の者からの暴力に抵抗できず、また男爵はそれが誤りだったと気づいていながら誰からも罰を受けることができなかった。男爵は考えた、自分が罰を受けるにはどうしたらいいのかと。執事が立場の上の者に抵抗できなかったというのならば、男爵も自分より上の権力者を殴れば、その罰を受けることができるのではないかと。
かくて、王が下した罰は、執事が下した罰でもあるのだ。
という話が冒頭に出て面白いのであるが、僕から言わせれば二つの罪が一つの罰で帳尻を合わせるように語られるこの話はおかしいと思う。王様がかわいそうだろう…
本編は、主人公の自己存在に関わるような根本の問題(貴族としての自分と乳母の死刑囚となった子が、実は取り替えっ子だったかもしれない)というところから原罪の意識に切り込むような。
あと、三角木馬の拷問で死ぬ人の話が出る。