私は幼い頃髪を切りにいくのが怖かったんです。

それというのも、囚人は社会復帰のために職業訓練を受け、特に理容師の資格をとる者が多い、という話を聞いたからです。
だから、私の中で床屋のおじさんは元服役囚で、目を瞑って剃刀の刃を首筋に当てられている時などは、今にも頚動脈をざくりといかれるのではと息を詰めてドキドキしていました。
散髪が苦手という人は多くいますが、怖いというのはあまり聞きません。唯一知っているのは原田宗典で、彼はエッセイで頚動脈を切られたらどうするんだと同じような話をされていました。
私はしばらくして近所のその床屋ではなく、もっと遠くの若い人がたくさん働いている店に行くようになり、そこではもう恐怖心を懐くことはありませんでした。
しかし数年後、