メイズプリズンの迷宮回帰―ソウルドロップ虜囚録

 相変わらずの上遠野節、なのだけど物語の主となるのが脱獄囚の御爺さんでしかもこれ異常ないくらい影が、薄いためか、それともこの本の客層に私が当てはまらないためか、それとも他に考えられる2、3の理由によってか痛快な面白さというのはほとんど無かったかな。でも物語の終焉にそって面白さはまして、これが小説中にある、迷い込むもやもやと出口をめざすラビリンス的なものと同期しているといったらいえるかもしれないとか何とか。
 そういえば後半では「あたしたちが、フリをして騙そうとしていた、その、ほんもの」(中略)「あたしを   殺しに来たの……?」といつかのブギーポップを彷彿とするシーンがいくつかあった。換わったところも多いけど、その実あまり変わっていないのかも、とも思った。