天宮の枢機

開闢す。

 彼は彼女を《戦友》と呼び、そこに個人的感情に左右されず、一時の迷いに惑わされない魂の連なりにも似た特別な想いを込めていたのは確かです。


 しかし彼女の方はというと、彼を見つめる温かなまなざし、彼の前で見せる大人びたしぐさ、なにより他の誰に向けられるわけでもないひときわ輝かしい笑顔。それらを見る限り、その想いもまた明らかでしょう。


 どちらも相手に強い想いを寄せているのは間違いありません。されどまた、悲しいかなそこに決定的な想い違いが存在しているのも間違いないのです。