この恋と、その未来。

内容紹介
高校最後の一年と四郎を残し、未来は去った。広美と結ばれた四郎は、彼女との将来のため料理を勉強し、広島に留まろうと考え始める。気が置けない友人達や相変わらずの和田、ぎこちなさはありつつも、優しいままの三好。未来だけがいない穏やかな日々を過ごし卒業を迎えた四郎は、独り立ちを前に父からの誘いで一時東京へ戻ることに。これからのことを母や姉達にも伝え、自分の未来へ歩き出した彼に、思いがけない再会の時が訪れる――。待望の、最終幕。

 前巻のあとがきで、打ち切られるが不本意なので話をまとめないで他の媒体でもいいのでいつか最終刊を出します旨の説明があった作品の、最終刊。結局同じレーベルからちゃんとした本という形で出版された。
 わざわざ、あとがきにあのような文章を載せることを許可したのだから、このような形での出版はないものだと思っていたので半分嬉しいが、であれば作者と出版社で、読者を不安にさせる前に、最終刊をうちで出しますって話を先にまとめておけよと、も思う。
 もちろん、ああいう文章を出して読者を不安にさせて話題を集める炎上商法とか、たんに協議不足とか、接待の銀座の寿司とか、(私のような)ファンの続巻を望む声の後押しというのもあったんだろうが。
 まあ、紆余曲折はあれ、思っていたよりずっと早く続刊が出たのだから不満などあるはずはない。
 あるとすれば内容がつまらなかった場合ですが。

「それで二胡さんに、体のこと言ったんだ。胸も触らせたりしてさ。そしたら、なんて言ったと思う?」
 俺が首を傾げると、未来は小さく笑って、こう言った。
「何だ、そんなことか。ってさ」

 この物語は、体が女性で精神は男な未来と彼のルームメイトになった主人公が、未来に惹かれたり他の女の子に告白されて未来を忘れるために付き合ったり、バイト先の年上女性の色香に惑ったり、傷つけたり傷つけられたり・・・はなかったかな主に傷つけてた、、優柔不断で最低とも言える主人公が、それでも未来くんへの想いを断ち切れない、煮え切らない態度を楽しむ作品だったのです。
 落とし所は難しく、主人公と未来が結ばれる未来も、まさかの可能性ではあるのかなとも思いましたが。結局はこのような結末になりました。
 そこでこの二胡のセリフは、攻撃力高いです。「何だ、そんなことか。」これまでの主人公の悩みを全否定する一言で、主人公はどうしたら良かったのかと思わずにはいられません。
 未来が男でも女でもお前が好きだと言えばよかったのでしょうか、いや、男の未来が好きだと言えばよかったのでしょうか、未来と主人公が付き合う未来ははじめから無かったのでしょうか、それとも、主人公の未来への想いは、ルームメイトの男の子の体がたまたま女性だったことに起因する気の迷いでしかなかったのでしょうか? 
 だとすれば主人公が気の毒でなりません。彼はそのせいで真ヒロインである三好さんや梵ちゃんとの未来を逃してしまったのですから。