いづれの御時にか

きみが、なんだか毎日の生活に疲れ果てたような気持になったときには、もう何も考えずに町でいちばんおおきな書店に行って、おもいきり古い時代の本を買ってきてしまえばいい。
そして帰りにはその足で洋菓子店によって、レモンタルトやエクレア、ミルフィユに下品なくらい生クリームがごてごて載ったイチゴケーキも買い込んで、アパートに帰って、カウチに座り込んで、泣くまいとおもっていたのに流れてきてしまうクソ涙をぬぐって、
いづれの御時にか、…」でもよければ「Haet! We have heard of the glory of the SpearDanes in the old days, the king of tribes—」でもかまわない、
もう今日は朝まで寝ないぞ、鳥の声がするまで、現代のクソ時間とはおさらばだ、と心に決めて、英雄達が冬の北海の霧のなかでもらす深いため息や、ヴァルハラから降りて、騎士達の魂を抱きとめて空中へさらってゆくバルキューレたちの歌声に耳をすますのが良いと思う。
そのとき初めて、病んでいるのはきみの心ではなくて、この現代の世界なのだと、きみの心のなかにはゆるぎのない確信がわくはずで、その確信のなかから、自分というものと真剣に応対して、前にも述べた「自分という名前のたったひとりのかけがえのない友達」を労って、なんとかこの世界を渉っていこうという勇気がわいてくるのだと思います。
本を読むということ | ガメ・オベールの日本語練習帳v_大庭亀夫の休日

イラストとしては最近読んだ虚構推理の漫画のヒロインとTumblrで見た写真イラストを参考としてます。