“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4)
「十四歳の春に、ちょうど日本に帰国していた時に、園遊会があって……。夜だったわ……。大勢の中で無視されている気持ちを味わうのが嫌で、人気のない場所を歩いていたら、一本だけ、花の咲いていない桜の木があって、それば自分みたいに思えた……。そのまま一人で見上げていたら、木の後ろからやわらかな月の光を浴びて、ヒカルが現れたの……」
ある人が普段身近にあって気にもとめない樹を、桜が咲いた時だけ賛美するのは馬鹿らしい(勝手だ)、と言っているのを見たことがあります。
たしかに満開の桜の園で一本だけ未咲の樹を見れば僕は勝手にも、残念だなとか切ないなとか思ってしまうでしょう。そういえば学校の教科書で読んだのですが桜色の染料は、桜の花ではなく幹を使い、しかも咲く直前の幹から採ると最良の色になるそうで、人にどう思われようとも、桜は開花する前でも幹の中にその美しさをしっかり溜め込んでいるのであり散った後には育んでいくのであり、なにも残念がることはないのかもしれません。
でも僕は勝手な人間なので咲いてる時の方がお酒が美味しいです。
“朧月夜” ヒカルが地球にいたころ……(4) (ファミ通文庫)
- 作者: 野村美月,竹岡美穂
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/04/28
- メディア: 文庫
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