異邦人

人間社会に存在する不条理について書かれている。主人公の「太陽のせい」というセリフが有名。邦訳としては、新潮文庫版の窪田啓作訳が広く知られ、冒頭一行目の「きょう、ママンが死んだ。」という訳も有名。
 
私は、早口に少し言葉をもつれさせながら、そして、自分の滑稽さを承知しつつ、それは太陽のせいだ、と言った。廷内に笑い声が上がった。

人間性(というものがあるのならば)が希薄なクールな主人公の母が死に愛していない恋人と結婚の夢想をしてすごしトラブルの中友人を作り太陽jのせいで人を殺し留置され死刑を言い渡される話。
カミュという名前がかっこいい。訳が秀逸でかっこいい。
とても面白かった。読ませる。
1部と2部があり2部は主人公ムルソーの人殺しの罪についての裁判について書かれる。
ムルソーはたしかに人を殺したのでありそれが裁判を経て確定した刑が言い渡されるのは不条理ではない。
何が不条理であるかというと母の死に対し涙を流さなかったこととか犯罪を犯した本人を不在にして進められる裁判とかそういったものだろう。フランス人民の名のもとに下される判決は死刑で、それはフランス人民が「太陽のせい」で人を殺してしまうような異邦人は排除してしまえという一方的なものに感じる。

母親の葬儀で涙を流さない人間は、全てこの社会で死刑を宣告されるおそれがある。

量刑としては、匕首を持った敵対関係の相手に対しピストルを使ったことは全く理解出来ない状況とはいえないし、場合によっては正当防衛もありえたかもしれない。死刑は重いものだと感じる。
どうでもいいけど、初め主人公を女性だと勘違いして読み進めていた。

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)