ライ麦畑でつかまえて

落第して学校を追い出されてほうぼうさまよう話。あと妹が萌えキャラ。
とても面白かった。
ミステリ好きの僕と全く趣味の合わない友人に言わせるとこういう小説?の主人公?はナルシズム的で嫌だ、というのだがいや別に自己愛なんてないしむしろ自分がダメな奴だってわかってるからこそこういう思考、文章になるのであって、これがナルシズムだというのならナルシズムじゃない男なんていないと抗議したいところなんだが。また反論から入ってしまった。最近は感想も言い訳がましくなっていけないな。好きなものくらい好きと胸を張って言えるようになりたいです。
その点、本作主人公のホールデンくんは好きとか、嫌いとかはっきり言う。ろくでなしなので説得力は分からないにしてもカッコいいことも結構言う。好きよりは嫌いなものの方が多いかもしれない。嫌いな物が多い文句ばかりいっている人を僕は好かないけど、ホールデンは憎めないな。
彼は始終インチキな奴らに怒ってるんだな。嘘っぱちの映画に泣き通しだけど退屈してトイレに行きたがってる子供にはじっとして行儀よくしてろと命令する女の人とかね。とにかくそういうのに彼は耐えられなくて学校は追い出されるしかなりむちゃくちゃなわけだ。僕からするとホールデンはインチキというかめちゃくちゃだな。インチキになりたくなきゃ聖人君子の振る舞いをするかめちゃくちゃな生き方をするしかないんだな。で、ホールデンくんはむちゃくちゃと。いつもインチキな奴らに怒ってる人といえば哀川潤もそういう設定だったと思うけど、あれは聖人君子の例かな。他にもいた気がするけどその人は魔女と呼ばれてたような。

「とにかくね、僕にはね、広いライ麦畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供達が、みんなでなんかのゲームをしてるとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりにはだれもいない−誰もって大人はだよ−僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ−つまり、子供達は走ってる時にどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんな時に僕は、どっからか、さっと飛び出していって、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」

馬鹿げてるとは知っていても思ってしまうんだよ。"故郷は遠くにありて思ふもの"じゃないけどさ。まあ、おもいようによってはそこら中がライ麦畑になるし、崖はそこここにあるし、ぼくだっていつでも保守になる用意はある。覚悟は足りないかもしれないけどね。
文学少女で登場して興味を持ったけど、あの本で読もうと思って実際読んだのはこれが初めてだったかな。
非常に読みやすくて助かった。初めは村上訳を読むつもりだったけど、こっちで正解だったかもね。
アメリカの小説でもこんなのあるんだなって思った。
 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)