蝉しぐれ

 非常に面白かった。
 案外というか、かなり読みやすかった。もっと難しい文体なのかと思ってた。
 すらすら読んでいって気がつくと朝だった。不思議!
 中学生くらいの人に読んで欲しいね。是非。
 話としては、封権社会を題材としている宿命というか、身分を越えた恋とか身分による服従とか、あるいは身分を越えた学問とか武道とか友情とか、そういうものが挙げられるけどそれは所詮題材でしかなくて、その上に成り立っている微妙な関係性をより重視して読むべきなのだろう。解説にもあったけど、静かな展開の調子、というのがこんな風に思わせるのかもしれない。
 個人的には、登場人物にはみんな幸せになってほしい、というわけではないけど、お福の事が忘れられない主人公が実際に結婚した奥さんに冷淡に接しているように書かれているのは心が痛む。奥さんがかわいらしいだけに。
 と、不出のはずの秘剣の名前を問われた後のフォローがないのが気になった(P444)。文中では師匠が耄碌して漏らしたんじゃないかみたいに書かれていた気がするけど。てっきりこれは続編へのフラグなのかと思ったけど、シリーズではないのですね。ううん? 読み飛ばしたんだろうか・・・?


蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)