希望の国のエクソダス (文春文庫)

 日本が閉塞を感じた時代と教育と経済についての話。
 7年前の本にして今読んでも遜色ないってのが驚異的。
 話としては国家的閉塞感のなか中学生の集団不登校が横行して、その中学生のトップとも言える少年が(ネットワークだからトップはないらしいけど、ともかく)、新しい共同体創生の開拓を果たすとかそんなところ。

 フィクションだけど。
 なにがフィクションかというとまるで中学生が宇宙人みたいに描かれていて、まぁ世界には小学生で飛び級して大学卒業する人もいるし絶望の中にこそ英雄という存在は生まれるのかもしれないけど、でもとにかくこんなパラダイムシフトみたいに中学生の大勢がいきなり変貌することはないだろう、と。いや一部、ではあったのかもしれないが、インパクトとしては新人と旧人の出会いみたいだった。
 そもそも中学生というのは未成年だし、意思能力が完全に形成されてはないと見るのが一般的であるし中学生の革新的なミュータントVSダメなマスコミや議員官僚といった既存組織、というのは構図としては、あるいは新共同体創生のモデルとしては面白いけど、現実にはもっといろんな人がいて多様性があるからフィクションではあると。
 でもここに書かれているのにかなり近いことが起こった分けだしすごい先見性、なのかも。こうした一連の運動を高い完成度で描いたというのはそれだけですごいし。
 あとはまー、法律とかイクス圏とか色々思うところはあったけど、非常に面白い小説でありました。


 あ、一つだけあるとすると、関口さんがポンちゃんたちに言いたいけどいえなかった違和感てなんだったんだろう。作中には語られてなかったはずだけど。う〜ん、淋しさみたいなものか、間違いを指摘したかったのか。
 危機感が行動の基みたいにあったけど、個人的には定常化社会を目指したい。俺は。


希望の国のエクソダス (文春文庫)

希望の国のエクソダス (文春文庫)