ありがとう、PSP - 栴檀の森

長く憧れていた冬山登山。
今までは受験やら勉強やらで手が届かなかったけど、
大学生になった俺は、やっとその夢を叶えられることに気付いたんだ。
一ヶ月前から準備を始めて、ついに東北のとある山へ。
でも登り始めると天候は悪くなっていくばかり。吹雪いてもきた。
さらに道にも迷ったらしい。だってまわりは雪ばかりなんだ、ちくしょうっ！
でも、しばらく前に進むと洞穴とも呼べないような岩の裂け目を発見。
雪から身を守る場所を見つけた俺は、そこで一晩を過ごすことにした。
激しい風の音と孤独感で狂いだしそうな夜だったけど、
リュックにPSPセラミック・ホワイトを入れてたことを思い出したんだ。
メモリースティックの中には去年の夏、キャンプに行ったときの家族写真。
絶望的な状況だったけど、PSPと家族の笑顔が諦めない勇気を与えてくれた。

でも、本当にPSPに救われたのはその翌日だった。
妙な唸り声を聞いて裂け目から顔を出すと、一匹のクマがやってくるのが見えた。
そう、この裂け目はあのクマの棲み処だったんだ。
猟銃なんて勿論持ってない俺はかたまってしまった。
持っているといえば抱いて眠ったこのPSPくらいしか・・・、そうだ！PSP！
俺はPSPを操作して親父がキャンプのとき川で釣り上げたでっかいニジマスの画/像を呼び出すと、そのままむこうの雪面へとおいて、自分は距離をとった。
柔らかで美しい光沢を持った白のPSPは大自然の雪の中でも違和感なし！
幅広い画面に映ったニジマスは鮮やかで釣り上げた瞬間そのままって感じだった。
やってきたクマは予想通りPSPに釘付け。
俺はその後を悠々逃げることができた。